失くしもの

失くし

 私はよくものを失くします。大事なものに限って失う、なかなか見つからないというのはどなたでも経験あるところでしょうが、私はひどいのです。「これは失くしてはいけない」といつもと違うところにしまい込んでしまうから、いざというときに見つからなくなってしまうのかもしれません。
 「あれっ、おかしいなあ、ないっ、ないっ」でドタバタとあっちこっちをひっくり返し始めると、家族の者は「また始まった」という冷たい視線を私に浴びせます。そんなことにはおかまいなく、「ああっ、どうしよう、ないっ、ないっ」と泣きそうになりながら部屋中を散らかしていくので、夫も娘も「どうしようもないなあ」「お母さんがまた泣きそうだ」という目つきで、ちょっとだけ一緒に探すふりをしてくれます。もちろん私しか知らない(そのときは私自身も忘れている)特別なところにしまい込んでいるわけですから、そう簡単に見つかるはずもありません。
 「探しものは諦めたら出てくるから、いったん諦めるようにしている」と悟りの境地を開いている友人もいるのですが、私はそんなに早く諦めたりはできません。一縷の望みを抱いて探し続け、ほぼ一日つぶしてやっと悟る、というより疲れ切るのですが、その日の終わりは「私が今日生きている意味は何だったのだろう」と空しさでいっぱいになり、最悪のやけ酒となってしまいます。失くしものをしない人間になりたいです。

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